鬼は内…児童虐待から子どもを救う取り組み

悲しい現実ですが、日本ではもちろん世界各国で深刻化しているドメスティックバイオレンス(DV/家庭内暴力)の問題。その影響は、夫婦間のみならず小さな子供たちにまでに及び、児童虐待の闇に身も心も傷つけられている子供が多く存在します。今回は、この事態を深く受け止めたスペインの児童支援団体「Fundacion ANAR」が制作した広告をご紹介し、キッズフレンドリーな企業が今後考えるべき新たなテーマとマーケティング手法を探っていきましょう。

子供を虐待から救え!広告「Only for Children」

アウトドア広告「Only for Children」は、スペインで活動する児童支援団体「Fundacion ANAR」が、虐待されている子供たちに救いの手を差し伸べるため制作したものです。

Anar Foundation "Only for Children"

広告の概要

児童虐待がなかなか表面化しない主な原因は、被害者である子供たちが「親を愛するがゆえに、周囲に助けを求められない(求めてはいけないと思い込む)」、また「助けを求めたくても、誰に相談してよいのかわからない」ということにあるのかもしれません。この看板広告では、そんな子供たちの心理と状況をうまく捉え、ある特殊な仕掛けでアプローチしています。

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身長175cmほどの大人が見た場合は、1人の少年がまっすぐにこちらを見つめているだけの広告です。

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ですが、身長135cmほどの子供の目線から見ると、痛々しく傷つけられた少年の顔とともに、「もし君が誰かに傷つけられているのなら、私たちに電話して助けを求めて」というメッセージが浮かび上がります。つまり、大人と子供の視線角の違いを応用した“子供にしか見えないメッセージ”を発信している広告なのです。

顧客ターゲット「だけ」に寄り添う効果とは?

上記の広告のように、「対象とするターゲットだけに寄り添い、メッセージを発信する」手法は、商品やサービスを売るマーケティングにおいても、顧客心理に大きな効果をもたらすでしょう。例えば、シナリオ脚本家として世界的に評価されているロバート・マッキーは、著作『STORY』のなかで、「人を動かす強力な方法は、人の心に訴えるストーリーを語ることだ」としています。とはいえ、人の心に訴えるということは、そうたやすいものではありません。まずは、ターゲットとなる顧客の行動や心理、生活状況などを徹底的に分析することが必要になります。ただ、ここで大切なのは、分析という知的なプロセスにありながら、顧客心理に寄り添う「情緒的な」姿勢を忘れないことです。それには、「どんな商品やサービスがあったら、お客さまが笑顔になれるだろう」「どんなお店だったら、お客様に喜んでもらえるだろう」「どんなサービスを提供したら、お客様はうれしいだろう」と、顧客目線で考え、実践していくことが重要なのです。そして、そのターゲットが絞りこめているほど、顧客はそれを自分「だけ」のためと感じ、商品やサービスに特別な価値を見出すのではないでしょうか。

山積する子育ての悩み…あえて、その「闇」に焦点を当てる 

子供向けの商品やサービスとなると、その対象となる「子供たちの存在」から輝いた未来を連想し、企業側もそういった明るい側面から顧客にリーチする場合が多いようです。しかし、実際の子育ては、明るく楽しいことばかりではありません。前述したDVのような問題もあれば、精神的な悩み、経済的な悩みと、「子育て層」ならではの悩みは尽きないでしょう。しかも、その根が深いものであればあるほど、他人に語られることはなく、人々の心のなかでくすぶり続けています。そこで、ここでもヒントになるのが、先ほどもご紹介したロバート・マッキー著『STORY』です。この本では、「人の心に訴える優れたストーリーには、明るい未来ばかりではなく、必ず闇のような暗い部分も示されている」と述べられています。つまり、明るい未来は“夢”であり空想ですが、暗い闇の側面は、直面している“現実”そのものなのです。ですから、その部分をあえて語り、顧客と共有し、解決策をともに考えることで、人々は感動し、企業に信頼を寄せることにもつながるのではないでしょうか。難しい課題ですが、今後の社会状況を真剣に見据えるならば、企業として検討の価値があるテーマだといえるでしょう。

まとめ

いかがでしたか? これからは、顧客心理に深く踏み込む勇気を持ち、真摯に取り組む企業こそが、真の信頼と共感を勝ち得ていくのではないでしょうか。

 

参考: