ドイツ 自然の中で学ぶ、教室のない「森の幼稚園」

子供を自然の中で伸び伸びと成長させたい、そういった教育方針から、校舎も囲われた敷地も持たず、自然環境の中で学ばせる「森の幼稚園」と呼ばれる幼児教育が注目されています。1950年代にデンマークで発祥したものですが、今ではドイツでもっとも多く開園され、そのコンセプトが欧米や日本、韓国などに広がり、需要が高まっています。

ドイツで年々増え続ける森の幼稚園

「幼稚園(キンダガルテン)」という言葉はドイツ生まれ。「子供たちの庭」という意味です。日本では、今のところ幼稚園というと認可を受けたものが一般的ですが、ドイツの幼稚園は、サークル的な自主保育も多く、それぞれが自由な教育方針で運営されています。現在ドイツでは、1500以上もの保育団体が森の幼稚園の教育方針を取り入れているといわれ、その数は年々増加しているそうです。このメソッドでは、天候や気温にかかわらず、3〜6歳の子供たちは、毎日屋外に集まります。森を中心に、川辺や田畑など自然が豊かな環境ならどこでも開園が可能です。多くの幼稚園では、時間割を用意していません。その時々の子供たちの意見と環境を見ながら、どうやって一日を過ごすのかを決めていきます。

ある森の幼稚園の一日

ベルリンの北に位置するカロウという町にある森の幼稚園の一日をのぞいてみましょう。肌寒い11月の朝、気温は氷点下近く。多くの森の幼稚園では悪天候に備え、山小屋などの臨時教室を用意していますが、この程度の寒さなら子供たちは、野外で問題なく過ごせるといいます。子供の数は6人、先生は4人。この日は、みんなでキャンプファイヤーをすることになりました。火を使うのは、幼稚園では早すぎると感じる方もいるかもしれません。ですがこれも、リスクを含めた自然体験の中で学ばせるという森の幼稚園のコンセプトのひとつ。先生は、あえて子供たちを厳しく監視することをせず、自ら学ばせるように努め、危険な状況になりそうであれば、みんなを集め、なぜそれが危険なのかと説明するそうです。たき火を囲んで歌を楽しんだ後、ハイキングに行く子もいれば、ロバと遊ぶ子もいます。子供が木に登り始めれば、先生は、どんな高さまででも自由に登らせるけれど、手伝ってあげるのは降りるときだけ、というルールがあるそうです。

四季を感じ五感を鍛える

森の幼稚園が人気を集めるのは、子供の成長に有益だという研究結果が出ているためでもあります。ドイツの名門校ハイデルベルグ大学で、通常の幼稚園と森の幼稚園に通っていた小学一年生の児童を6つのカテゴリーで比較したところ、そのうちの4つ(「認知的作業(論理的に考え解決し、記憶する能力)」「社会的行動」「創造性」「身体能力」)において、森の幼稚園の卒園生が優っていたのです。森の幼稚園では、子供は四季を感じ五感を鍛えながら育っていきます。木の葉や枝などの自然物を用いて自分で遊具を作り上げる過程で想像力を養え、季節を間近で観察するうちに科学への関心も高まります。ちょっとしたケガをする頻度は、室内にいるより多くても、そうした経験から危機管理を学ぶため、大きな怪我をすることは、むしろ普通の子供より少ないといわれています。

日本でも広がりをみせる森のようちえん

日本でも森の幼稚園のコンセプトは、実践されるようになってきています。日本では認可幼稚園と区別するために「森のようちえん」と表記しており、2008年には「森のようちえん全国ネットワーク」が設立されました。全国で野外幼児教育の活動を取り入れる保育施設や民間団体の紹介をしています。 豊かな自然や美しい四季に恵まれた日本にとって、森の幼稚園は、とても魅力的な教育方法だといえるでしょう。 近所にそのような施設がないというご家庭でも、子供を外で遊ばせる機会を増やすようにしてあげることはできるはず。そのときに、ただ遊ばせるだけではなく、森の幼稚園のコンセプトを思い出して、子供を過保護にしすぎず、自然の中で自由に、自主的に学んでいく過程を見守ってあげてみてください。

 

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