春は牧場、冬は音楽院!パリの幼稚園の遠足事情

2歳半から5歳までの子供たちが通う、フランスのエコール・マテルネル。就学前教育を受ける場所で、読み書きを習うほかに、エコールの外へ出かける課外活動もあります。映画を見に行ったり、近所の図書館へ行ってお話を聞いたりするなど、その内容はさまざま。でもそれだけではなく、親からすれば、「なかなか連れて行ってあげられなかった場所へ、子供を連れて行ってもらえてよかった」、と思えるような充実した遠足もあります。

暖かくなる春は動物と触れ合える牧場へ

最近までフランスの地方に住んでいた筆者の娘は、車で走っていればいつでも牛や羊、馬やロバなどを見かけることができました。たまにそこに車を止めてあげると、娘は抵抗感なく動物に近づいて顔をなでていました。しかし、パリをはじめ、パリ近郊の子供たちは、こんなふうに日ごろから大自然や動物と触れ合う機会があまりないため、遠足は貴重な自然体験の場になるのです。3月下旬、いよいよ春になれば、自然の中に行ける機会の到来です。パリ郊外のいくつかのエコールでは、足並みを揃えるように、近場の牧場へ行くという遠足の連絡がまわってきます。

パリの近郊には意外にも牧場が点在しており、それほど遠くない場所に公園と併設された牧場があります。遠足当日は、エコールに到着後、すぐにバスに乗って出発します。日本の幼稚園の遠足といえば、お弁当などを持参する楽しみもありますが、フランスのエコールでお弁当を持参する遠足というのはあまり耳にしません。子供たちはお昼にはエコールに戻って来て、食堂(カンティーヌ)で昼食を食べるのが常です。

牧場へ行く前は、教室でしっかり事前学習を

牧場へ行く前には、事前学習も怠りません。これはちょうど、動物の名前を一通り覚える機会にもなるのです。担任の先生は、例えば牡羊、雌羊、仔羊の写真とともに、その呼び名を記述したパネルを用意します。日本語で「羊」の性別や親子の区別をつける場合には、「ひつじ」というひとつのグループがあって、その中に雄、雌、子供の違いを説明してあげればよいでしょう。でも、フランス語は少々複雑です。なぜなら、全て呼び名が変わるからです。例えば、牡羊は「ル ムートン(le mouton)」、雌羊は「ラ ブレビ(la brebis)」、仔羊は「ラニョ(l'agneau)」となるのです。これは、牛、豚、馬、鶏でも同様です。そのほかにも、その動物の特徴や動物からとれる食べ物(チーズの種類)の名前なども教えます。このような事前学習を元に、実際に牧場を訪れた子供たちは、その名前を確認しながら動物と触れ合うことができるのです。

寒い冬の間も、充実した課外活動を

一方、冬にはどんな課外活動があるのでしょうか。どんなに外へ出ることがおっくうになりがちな冬にでも、エコールでは子供たちのために課外活動を活発に行なってくれます。例えばパリ郊外のエコールでは、「コンサルバトワール」と呼ばれる地方や県が管轄する音楽院へ行き、実際にコーラスやダンスに触れる機会をつくってくれます。月に2回、定期的にコンサルバトワールへバスで行き、子供たちは繰り返し音楽やダンスを習うことができます。本来このコンサルバトワールは、音楽、楽器、ダンスなどを5~6歳から学ぶ機関で、習い事をさせる場所としても大変人気があります。実際、応募開始と同時に申し込みをしないと、すぐに定員オーバーしてしまいます。そのため、4歳の子供が事前にコンサルバトワールに行けるというのは、親にとっても喜ばしいことなのです。

地域色が出るエコールの遠足。ワイン産地ならぶどう狩りも

フランスのエコールの遠足は、当然のように地域によって違いがあります。パリ近郊に住んでいれば、6歳から11歳くらいまでの子供が通うエコール・プリメール(日本の小学校に相当)では、ロワール地方のシャトーへ行くこともできます。ワイン産地に近ければ、受け入れてくれるワイン農家でぶどう狩りの体験も。あるエコールでは、平均3歳の子供たちが長靴を履き、バケツを片手にバスで出かけます。そこで、先生の助けを借りながら小さなぶどうをハサミで切り、バケツをいっぱいにして帰ってくるのです。

フランスのエコールでは、何人かの親の付き添いが求められることがほとんどです。実際に子供がどんな様子で友達と過ごしているのか、どんなことを体験できるのか、などを知ることができる良い機会にもなります。

 

参考