大人にとっては目からウロコ…子供の豊かな感性を育む。

創造力豊かで伸びやかな感性。それは、どの子供にも生まれながらにして与えられた宝物だといえるでしょう。その感性を「もっと伸ばす教育がしたい」という大人たちの願いもまた不変的なものです。しかし、その方法も一歩間違うと逆に子供たちの「感性」を潰し、その柔らかな心でさえも傷つけてしまうことに。今回は、2つの事例を通してその危険性を示唆し、感性豊かな子供に育てる方法について考えてみましょう。

大人の価値観を押し付けないで(ACジャパンCM動画「黒い絵」)

まずは、公益社団法人ACジャパンが2002年に発表した「黒い絵」というCM動画から考察してみましょう。この作品は、海外でも高い評価を受け、アジア太平洋広告賞グランプリ、カンヌ国際広告賞銀賞などを受賞した名作です。

YouTube動画:ACジャパン「黒い絵」

ストーリー:

学校で行われる図工の授業。子供たちは、それぞれに好きな絵を描いていきます。そのなかで、一心不乱に画用紙を黒く塗りつぶしていく少年。何枚、何十枚という「黒い絵」を、幾日もかかって無言で描き続ける少年に、教師、両親、ひいては医師までもが問題を感じ、少年は病棟へ隔離されることに。しかし、ある日、一人の看護師が、その黒い絵の中にわずかな余白を見つけることで事態は急展開していきます。そこで大人たちが見た衝撃の結末とは……。

この90秒のCMには、誰もが深く考えさせられるはずです。これほど極端ではなくても、子供たちは、大人に対して“言葉では伝えられないほどの大きな想像力”を秘めています。CMのラストに流れる「子供から、想像力を奪わないでください」というコピーは、それを忘れてしまいがちな、私たち大人への警告文なのです。

大人の偏見を押し付けないで(森美術館「ゴー・ビトゥイーンズ展」)

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次に考察するのは、2014年、東京の森美術館が開催した「ゴー・ビトゥイーンズ展」で発表されたジャン・オー『パパとわたし:No.29』という作品です。

1人の白人男性と、それに寄り添うアジア系の少女。この作品を観た大人であれば、まず、「この2人は本当の親子ではない。なぜこういった関係性になったの?」という思いがよぎるはずです。実際にこの作品は、国際養子縁組を通じて中国からきた子供と、その受け入れ先であるアメリカの家族をモチーフにしています。しかし、ここで想像していただきたいのは、この作品を観た子供たちの感想なのです。おそらくほとんどの子供は、青い空に花咲く木々、春を思わせる温かな陽射しのなかで穏やかに微笑む2人を見て、まずは“幸福感”を感じ取ることでしょう。そして、『パパとわたし』というタイトルを見て納得するのです。「この女の子はパパが大好きなんだね。仲良しの親子なんだね」と。実際に、養子縁組された少女たちは、「天使」「プリンセス」などと呼ばれ、家族からとても大切にされているそうです。つまり、国や血のつながりを超えて育まれている家族愛の本質を的確に捉え、素直に受け入れる感性は、子供たちのほうが優れているといえるのではないでしょうか。この展覧会の副題でもある「こどもを通して見る世界」。その純粋さを、大人の偏見で汚してしまわないよう心がけたいものです。

“体験”と“感情”を共有しよう!

いかがでしたか? ある意味では、「子供たちは、大人の大いなるお手本」だということにお気づきいただけたのではないでしょうか。では、その素晴らしい資質を守りつつ、感性豊かな子供に育てていくためには、私たち大人に何ができるのでしょう。

さまざまな考え方がありますが、まずは、子供たちに「体験する」という場をできるだけ多く提供してあげることもそのひとつではないでしょうか。体験には、必ず喜怒哀楽などの「感情」が発生します。そして、機会があるごとに、その感情を言葉にして伝え合うようにするのです。また、言葉にできないような感情には、黙って寄り添う心を示します。そうやって、大人も子供も同じ目線で“体験を共有”し、“感情を共有”することで、子供たちは他人と共感する喜びを知り、より良い人間関係を築くためのコミュニケーション方法を学んでいくことでしょう。

 

参考: